2013年12月10日火曜日

映画 | 『かぐや姫の物語』

随分と淡白な現代っ子、なよ竹の君

(C)2013 畑事務所・GNDHDDTK

『かぐや姫の物語』。
宮崎駿監督の『風立ちぬ』と同日公開予定でしたが、
延期になっていた本作がやっと公開されました。
宮崎監督の引退宣言後、第一作目のジブリ新作です。

予告編の素晴らしさに期待は膨らむばかりで、試写会場へ。
会場は『風立ちぬ』の時と同じく長蛇の列でした。
試写終了時に拍手が起こりました。
で、ネットでは試写終了後、評論家の方々から早くも大絶賛の嵐、不思議になほど全く不評を見かけませんでした。

高畑勲監督は『ホーホケキョ となりの山田君』と『平成狸合戦ぽんぽこ』が好きなのですが、
今回は『かぐや姫』。日本国民の大半が知る題材です。

公開後、世間のかぐや姫フィーバーも落ち着いたので、やっとレビューを載せようかと思います。


「今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。
野山に混じりて竹を取りつつ よろづのことに使いけり。
名をば、さぬきのみやつことなむいひける。
その竹の中に元光るたけなむ一筋ありける。」
竹取物語の原文が、本編の冒頭でも語られます。

「…怪しがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れば三寸ばかりなる人、いとうつくしうて居たり。…」
と続き、かぐや姫との出逢いに続きます。

…しかし!『竹取物語』のこの冒頭をそらで言える程度の思い入れがある私にとっては、
巷の有名評論家の方たちの大絶賛!には共感できませんでした。…すみません。

私には本作の「かぐや」は、
絶世の美女とも思えないし、キャラクターとしての魅力も感じませんでした。

まあ、もともとかぐや姫というのは、「いけすかない女」なわけですよ。
小さいころから蝶よ花よと育てられ、多くの3高男子(死語)に告られ、
結婚する気もないのに「××をくれたらあなたのものになってもいいわよ~」とかなんとか、
無理難題を出しつつ、気を持たせるようなセリフを吐く女なわけです。
しかも、20年も育ててくれたおじいさんおばあさんの老後も考えず、
月に帰っちゃうという。

おじいちゃんおばあちゃん子の私にとっては「とんでもねー女」だったのです。

しかし、それでもこの物語の魅力はなんだろうと考えたときに、
やはり真っ先に思い浮かぶのは「おとぎ話のお姫様」ってこと。
その肩書きがあればどんな女であろうとまあ許される、子供たちにとっての究極の免罪符「お姫様」。
「お姫様」の象徴、美しい容姿ときらびやかな衣装は、女児たちを寛容にするマストアイテムです。

日本のお姫様の醍醐味は、なんといっても長い黒髪と華やかな衣装です。
古くから原作に添えられてきた挿絵などにある床にまで流れる黒髪は画面的にも美しいし、
十二単の折り重なるさまや衣擦れの音は、想像しただけで心地よい。

しかし本作の「かぐや」は、贔屓目に見ても「美しい」黒髪には見えないし、
十二単もろくに着やしない。バッサバッサはだけるシーンはあるのに。

黒髪の流れひとつで悲哀も情緒も儚さも表せるのに、それをほぼ使わなかったのはすごく勿体なく感じました。


キャラクターについてですが、
原作のかぐや姫の方がもう少し、翁と媼に愛情を感じますし、
原作での帝の「不老不死の薬」のくだりなんかは、辻褄があっているのに、
映画では原作の人間関係をアレンジしてしまったばかりに、物語の細部は破綻しています。

本作では、かぐやをとても人間臭くしてしまったために、
かぐやのいけ好かない点ばかりが目につき、
物語を通して、かぐやの「我」ばかりは見えても、
育ての親への愛情や、かぐやの心の美しさや外見の美しさへの表現が希薄に感じました。
自分の事だけしか考えない、育ての親との別れも割とあっさり目。
随分と淡白な現代っ子だよね、なよ竹さんちのかぐやさん。


そもそも「美」の基準をどこにするか、という点で話は違ってきます。

原作のかぐやは人としての愛や情を持ち合わせていますが、
・「我」の描写は少ないこと、
・容姿などの表面的な美しさ
など人間的でない描写を駆使して「天上人」としての、「美」として描いています。

しかし、映画では
・「自分の思うように(人間らしく)生きたい(=我)」、
・動物や草木のような自然と共に生きること
を「美」として置いているのでしょう、

「想いのまま」に生きる姿は、人間としての「美」であり、「天上人」としての「美」は感じません。

唯一地球人ではないからなのかな、と思ったのが、この愛や思いやりが希薄なこと、くらいです。

ジブリの「自然讃歌」は嫌いではありませんが、
「かぐや姫」にまで「自然讃歌」を持ち込むのはいささか説教臭く、
「健全な美」というのもこの物語とはそぐいません。

近所のおじいさんが
「化粧した顔よりも素顔が一番じゃ」とか
「ちょっと太ってるくらいが一番キレイじゃ」とか言ってる姿を想像してしまいました。

本作は単純に「おとぎ話」で描いてほしかったなと残念でなりません。


キャッチコピーとなっている「姫の犯した罪と罰」。
「竹取物語」の原作でもかぐや姫が「ある罪」を犯したせいで、「罰」として地上(地球)に下されたという内容が書かれていますが、それが果たしてどんな罪だったのかは、諸説あり、
長年ミステリーとされてきました。
この映画キャッチコピーで、それがいかにも本編内で描かれているようではありますが、
明確には言及されていません。

高畑監督は本作の完成までに8年をかけているそうで、
以前にこの物語のプロローグを書いていたそうなのですが、
そのプロローグが完成した映画には加えられなかったそうです。

そのプロローグにどんなものが描かれていたかは知る由もありませんが、
結果、観客たちが自身で考える「罪と罰」に託されてしまったわけです。


手描きの水彩画のようなタッチの画が動く140分は確かに圧巻でした。
あとは昔の日本の生活様式が観られたのは楽しかった。
糸を巻く様子や、着物を着る様子や。
そういう日常の細かい様子がとても丁寧に描かれています。

声は皆、とても良かったです。
地井さんの翁は愛らしくて滑稽で、ちょっと泣けました。
媼の宮本信子さんも、かぐやの朝倉あきさんも良かった。

なにより、プレスコ形式で撮ったのは敬意を表します。
「プレスコ」とは音声を先に録って後から画を当てはめる手法です。
おかげで地井さんの最後の作品を完成品として観ることが出来ました。

2013年8月16日金曜日

告知|コラム掲載:『オズ はじまりの戦い』

マイナビさんで『オズ はじまりの戦い』についてのコラムを書きました。
↓↓↓

マイナビ:
かつて見たことのない世界に飛び込め!
この夏は『オズ 始まりの戦い』で驚きのファンタジー体験をしよう!


(C)2013 Disney
(C)2013 Disney





















『オズ はじまりの戦い』の映像は本当に素晴らしいので、
まだ未見の方は是非一度、DVD/Blu-Rayでご覧になって下さい。

特に「これから冒険が始まるぞ!!」という気分になるオープニングはとっても素晴らしいので!

主演はサム・ライミ版『スパイダーマン』で、主人公ピーターの親友の御曹司役ハリーを演じていた
ジェームズ・フランコ。
私個人の印象では、ジェームズ・フランコは「いいとこのぼっちゃん」的な印象を
ずっと払拭できない感じで、今ひとつ面白みに欠けていると思っていたのですが、
『127時間』(2010・米/英)を境にとっても面白い俳優さんになったなあと思います。
『スプリング・ブレイカーズ』(2013・米)しかり、本作しかり。

本作では「口先だけの軟派で軽薄なペテン師」なのですが、これが見事で、
それでいてどこか憎めない主人公オズを好演しています。

1939年版との繋がりやモチーフが散りばめられているのは勿論、
本作中での現実世界とオズの世界との対比なども凝っていますし、
また1939年公開の『オズの魔法使』に対する敬意を
きちんと感じられる演出がされているのもとても素敵です。

見どころは沢山ありますが、
この見どころを知っているときっともっと楽しめるはずです。

是非、お暇なときにコラムをご覧くださいm(_ _)m
↓↓↓

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オズ はじまりの戦い ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]

2013年8月2日金曜日

「なんでコレ?!」な邦題を考える

2013年8月2日の今日、驚くニュースが発表されたので、今日はそれについて。

日本一最悪な邦題がタイトル変更。フォックスが公式謝罪
2006年にDVD発売され、一部の映画ファンから熱い支持を集めるも、あまりにもヒドい邦題で発売されたため“日本一最悪な邦題”と称されてきた映画『バス男』について発売元の20世紀フォックスホームエンターテイメントジャパンが公式謝罪し、オリジナルタイトルの『ナポレオン・ダイナマイト』として10月に再発売されることが決定した。  (ぴあ映画生活より引用)
問題の作品がこれ↓↓↓


20世紀FOXホームエンターテインメントはツイッターの公式アカウントでも

と、謝罪。これにはびっくりです。

『ナポレオン・ダイナマイト』はあの時期大ブレイクした皆さんご存じの『電車男』の時期と同じだったため
このようなタイトルが付けられましてしまいましたが、このような例はこの作品だけではありません。

たくさんの映画を観ていると、本編はなかなか面白いのに今回のような時流に乗った邦題や、
時流云々など関係なく「なんでこんなタイトルに…」とがっかりするタイトルをつけられた作品も少なくないので、今回のニュースには驚きました。
新しい風の予感です。

今回はそんな新しい風を吹き込んでくれたこのニュースに乗っかって、
「その邦題はどうなのよ」な映画を考えてみることにします。


『続・激突!カージャック』(1974・アメリカ)…[原]『The Sugarland Express』
言わずと知れたスピルバーグ監督の『激突!』のヒットを受け、邦題が付けられましたが、この作品は映画『激突!』とは全く関係のない作品。
私は昔「Sugarland's Lands」というサイトを運営していましたが、そのサイト名はこの映画から名付けました。

原題は『The Sugarland Express』、福祉局によって里子に出された子供を奪還するために、脱走させた夫と妻がシュガーランドへと向かう、実話をもとに作られたロードムービーです。

視覚的な映画を撮らせたら神様!のスピルバーグの感性が生きた作品です。
主演のゴールディ・ホーンもしたたかで愚かでチャーミング。刑事役のベン・ジョンソンも素敵です。

『激突』なんてタイトルをつけられてしまったために、前作ようなサスペンスを期待した人の期待を見事に裏切ることになってしまい、あまり評価されなかった悲運の秀作。
もう一度、きちんとしたタイトルに改めて欲しいです。ホント。

『素顔のままで』(1996・アメリカ)…[原]『Striptease』
公開時に「ひどい邦題…」と思ったのを覚えていたので。
デミ・ムーアがストリッパー役ということで当時話題になった作品です。
デミの7歳になる実娘ルーマー・ウィリスが、彼女の娘役でスクリーンデビューしたのもこの作品。
ゴールデン・ラズベリー賞で最低女優、最低監督、最低脚本などあまたの「最低」を獲得した映画ですが、コメディなのにロマンス風が漂うこの邦題はさすがに無いと思う…。
最初タイトル見た時ハーレクイーン・ロマンスかと思ったわ。


『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008・スウェーデン)…[原:Let the Right One In]
『ぼくのエリ』で止めとけば、とっても素敵な邦題だったのに、なぜ?…なぜ~!?
翌年クロエ・グレース・モレッツが主演で『モールス』(2011・米[原:Let Me In])としてリメイクが出ました。
私はクロエ・グレース・モレッツがとても好きだけど、これについては『ぼくのエリ』の方が断然好き。
エリを演じたリーナ・レアンデションが、人間離れしているというか、本当に種族を超越した異質な感じですごく良いのです。
日本公開にあたり、肝心の部分にボカシを入れられてしまい、物語の持つ意味合いが伝わりづらくなってしまいました。とても残念です。
この部分はサブタイトルに凄く関係する部分であり、本編を見ずにサブタイトルをつけたんじゃないかと思いたくなるひど酷いサブタイトル。こちらは『ぼくのエリ』というタイトルだけでモザイクなしで再発売してほしいです。そしたら即買います。

『エンジェル・ウォーズ』(2011・米)…[原:Sucker Punch]
スタイリッシュでちょっと切なくて、とてもとても好きな映画だけど、世界各地の評価は散々。それも半分邦題のせいだと言いたい程の勢いです。正義に立ち向かい地球を救うセクシーガールたちの物語ではないです。観客が不意打ちを食らう感じからも、原題[Sucker Punch]で良かったなあ。
あ、劇中に使われた「Sweet Dreams」でも良かったかも。





『26世紀少年』(2006・米)…[原:IDIOCRACY]
『バス男』同様、「時代に便乗して、こんな邦題をつけてしまい…」な、作品。
社会風刺コメディで面白いだけに残念。








『悪魔と天使』(2006・米)…[原:The Visitation]
同じく便乗タイトル、『ダヴィンチ・コード』の2作目『天使と悪魔』から。
エドワード・ファーロング主演のオカルト映画。パッケージまでそっくり…ひどいや(笑)。
『天使VS悪魔』っていうのもありましたっけ…(笑)。
ちなみに↓↓『天使と悪魔』、『天使VS悪魔』のパッケージ…。






 


『最高の人生の見つけ方』(2008・米)…[原:The Bucket List]
主演のジャック・ニコルソン本人も来日時、この邦題になんとなく難色を示した様子。人生の教訓、的な物語というより謳歌の物語だと思うので「棺桶に入る前にやっておくことリスト」的な原題の方が合ってると思う。邦題は「感動ものだよ!!」って声高に叫んでる感じ。それほど酷い、というほどではないのかもしれないけれど、あざといタイトル。
そういえば邦題って「~のしかた」「~の方法」とかハウツー系タイトルが割と多い。





邦題が良くて売れる映画もあるように、邦題が悪くて見る気にもならない、あるいは邦題とは内容が違うベクトルへ興味を向かせてしまい、かえって評価を低くしてしまうという映画があるのは事実。
そういう映画を見ると、本当にもったいないと思います。

B級映画などには特に「とんでもタイトル」が多いのですが、
「とんでも映画」に「とんでもタイトル」をつけてどうにか売ろうという場合が殆どです。
それでも続編でもないのに続編のようなタイトルをつけられていたりと、かなりややこしい。

『沈黙の戦艦』(1992・アメリカ)…[原:UNDER SIEGE]には、ちゃんとした続編[UNDER SIEGE 2]があるのに、邦題は驚いた事に『暴走特急』(1995・アメリカ)。
全然関係無い映画には『沈黙の要塞』(1994・アメリカ)とか、『沈黙の断崖』(1997・アメリカ)とか…「沈黙」ついてるのに…
どうしてこうなった!?






あとややこしいのが『ファイナル・ディスティネーション』シリーズ。


1作目『ファイナル・デスティネーション』(2000・アメリカ)… [原:FINAL DESTINATION]舞台は飛行機
2作目『デッドコースター』(2003・アメリカ)…[原:FINAL DESTINATION 2]舞台は高速道路
3作目『ファイナル・デッドコースター』(2005・アメリカ)… [原:FINAL DESTINATION 3]舞台は遊園地



4作目『ファイナル・デッドサーキット 3D』(2009・アメリカ)…[原:THE FINAL DESTINATION]舞台はサーキット場
5作目『ファイナル・デッドブリッジ』(2011・アメリカ)…[原:FINAL DESTINATION5]舞台は吊り橋
あちゃ~…って感じ。ごっちゃごちゃ。

全く関係ないホラー映画で『ファイナル・デス・ゲーム』(2009・スペイン/アメリカ)…[原:Open Graves]って言うのがあるけど、これはホラー版『ジュンマジ』みたいな感じ。
どうせなら『ダーク・ジュマンジ』とかつけとけば良かったのに。
『ファイナル・デス・メッセージ』(2010・アメリカ)なんてのもあったっけ。ややこしいんじゃ。
 
他に『ファイナル・デッド・コール』『ファイナル・デッド・パーティー』『ファイナル・デッド・スクール』
『ファイナル・デッド』『ファイナル・デッド・オペレーション』なんてのも・・・だけどもう割愛(笑)!!
まあ『ファイナルデッド』な邦題については、いずれまとめて書こうと思っています。

他にも
『ミッション:8ミニッツ』(2011・アメリカ)…[原:Souce Code]
『団塊ボーイズ』(2007・アメリカ)…[原:Wild Hogs]
『ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』(1964・アメリカ/イギリス)…[原:A Hard Day's Night]
とかキリがないけど…とりあえず今日はここまで。。。

2013年7月30日火曜日

映画 | 『風立ちぬ』

─二郎の眼鏡には愛が詰まっている─

映画『風立ちぬ』ポスター(C) 2013 二馬力・GNDHDDTK
(C) 2013 二馬力・GNDHDDTK
「スピルバーグはいつか、リンカーンの映画を撮るだろう」とずっと思ってきたけれど、
それと同じようにまた「宮崎駿はいつか飛行機の設計者の映画を撮るだろう」と思ってきた。
奇しくも同じ年に、それを目にするとは。

宮崎駿監督作品を観ると、必ずスピルバーグ監督を思い出す。
しばらくはそれがなぜなのか、ずっと判らずに漠然とした感覚のままでいたが、やっと気づいた。

宮崎監督はスピルバーグ監督同様、「善良なる大衆」を描くのがこの上なく巧いのだ。
スクリーンの中いっぱいに広がる大衆の、一人一人の姿を見ると、どの人も人間臭くていい。
子供は「本当に」子どもだし、お年寄りは「本当に」お年寄りだ。

そんな人間臭い彼らが当たり前のようにスクリーンの端に存在しているのをアニメでやってのける監督を、私は世界でまだ知らない。


零戦の設計者、堀越二郎の半生を描いた『風立ちぬ』。
2009年~『モデルグラフィックス』誌にて宮崎監督自身が連載していた漫画のアニメ映画化ですが、
宮崎駿監督の映画作品で実在の人物を描くのは初めて。

『紅の豚』などには大人のファンも多いようだけど、
初めて大人(だけ)に向けて作られた作品ではないだろうか。

宮崎監督の作品を見ていると、
ずっと空を仰ぎ見ているような、空に手を伸ばしているような
そんな気持ちになる。

『紅の豚』はもちろん、『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『魔女の宅急便』『千と千尋の神隠し』。
『ルパン三世 カリオストロの城』の城の屋根を走るルパンの浮遊感さえ、忘れてはいけない。
テレビアニメも入れれば「未来少年コナン」。

公開してから本作がジブリ作品としては背伸びした作品とじゃないかいう声もちらほら聞こえるが、
私にしてみれば、空が大好きだ!飛行機が大好きだ! という言葉が聞こえてきそうな、
そんな作品だった。

昨今の昭和讃歌の傾向が多い日本で、度々宮崎駿監督の作品の名前を耳にすることもあるが、
私は宮崎駿監督の作品から昭和讃歌の匂いをかぎ取ったことは一度もない。
自然讃歌なら大いに感じるし、それは大いに賛同したい。
ただそれが説教臭くなってしまっては、もったいないのももちろんのこと。
『もののけ姫』なんて説教臭いことこの上なく、あまり好きではなかったので、
今回の偉人伝的な題材にちょっとした懸念があったことも事実だ。
しかし本作は説教臭さを殆ど感じず、ただ、憧憬としての「空」があるのみであった。

何かが好きでたまらない、という気持ちで作られた作品には多かれ少なかれ「オタク臭」が漂うが、
飛行機や設計図云々の専門用語などが飛び交う本作は、まさに「オタク臭」が漂い、好感が持てる。
まるで好きな男子が自分の趣味について目をキッラキラさせて語るのを、「?」と思いながらも微笑ましく聞いている女子のソレに似てる。

「好き」で作られた作品には観客にも伝わる「愛」が詰まっている。


宮崎監督自身は反戦意識の高い人のようですが、
その一方で戦闘機が好きという矛盾が、この作品の中の堀越二郎本人のそのものとして描かれているのはとても興味深い。

本編の中で、度々二郎のメガネのレンズには二郎自身の目が反射して映り込んでいる。
この表現には終始、見入ってしまった。
実写ならともかく、アニメでそれをやっている作品を私は観たことがあっただろうかと記憶を辿ったけれど、
まったく思い当たらない。すごい。

メガネに「かけている人自身の目」が映り込むのは、度の強い眼鏡をしている証拠だ。
パイロットになりたくても目が悪くてなれなかった堀越二郎。
常にメガネに「目」が映り込んでいることで、二郎の目の悪さが強調されている。

そうして観客は、二郎の眼鏡越しに、二郎の「空へのやむなき愛」を見るのだ。

2013年7月12日金曜日

告知|電子書籍が発売になりました!

この度、電子書籍が発売されました。

絶対に見逃すな! 犬の症状これだけは! 
獣医さんにすぐ伝わる「ワンコ手帳」のススメ (impress QuickBooks)




配信開始の連絡を頂いたのは折しも我が家のワンコ10歳の誕生日!
私にとっては、とてもとてもめでたい一日でした。

今まで色々な本を書きましたが、著書となるのは初めてのことで、
嬉しさいっぱいと共に大変緊張しています。

この本でおススメしている「ワンコ手帳」は、実際私がずっとやっている方法です。
幼い頃から日記も三日坊主だったので、気負いなく実践できているこの方法は、私にピッタリだったのだと思います。
ですので、私と同じように日記とか三日坊主になっちゃう…という人には、特におススメです。

イラストも自分で描いたのですが、
我が家のワンコを見ながら描くので、何度描いても短足に(失礼)なってしまい、苦労しました。
ですので大家さんのワンコ(柴)を見本にさせていただいたり、
いつも行く花屋さんのワンコを参考にさせていただいたり、
お散歩友達のワンコを参考にさせていただいたりと、色々な人やワンコに助けられて、この本が出来ました。

監修をしていただいた田向先生、本書の担当をしていただいたKさんには
根気よくお付き合いしていただき、感謝の言葉もありません。

監修は

など多くの著書があり、「情熱大陸」などにもご出演された田園調布動物病院の院長、田向健一先生にお願いしました。

書いている間中、我が家のワンコがもしそうなったら…と考えては涙目になりつつ、
本当に頑張って書きました(描きました)。

電子書籍はkindleはもちろん、スマホ(android)、iPhone、iPad、iPad touchなどでkindleアプリを使用してご覧になれます。
サンプルもダウンロードできますので、試し読みも可能♪
どうぞよろしくお願いいたします。

この本で一人でも多くの飼い主さんが、上手に獣医さんに症状を伝えられるよう、
それが一刻も早くワンコの不調を改善するための手助けになりますよう、
心を込めて。

また、この場をお借りして、田向先生とKさんに、心よりお礼を申し上げます。
どうもありがとうございました。

2013年6月12日水曜日

distro|リメイク版『キャリー』

今日、初めてリメイク版『キャリー』の劇場予告編とポスターを観ました。
ソニーピクチャーズ配給作品は、本国の予告編とほぼ同じものを使用することが多いのですが、
リメイク版『キャリー』も、本国のものとほぼ同じ予告編でした。
ポスターも何パターンか目にしていますが、
今回観たのはこちら。
今の時代ならではの「モーションポスター」です。
©2013 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. and Screen Gems, Inc. All Rights Reserved. | CARRIE is a trademark of Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

ちょっと目がチカチカしてくるけど、格好いいですねー。 

そして以下が本国のポスター。
めちゃくちゃ格好いい!!

で、日本のポスターがこちら。
うん…まあ…。

(2014・03追記)――――――――――――――
とても残念に思ったのが、DVDのジャケット↓

ホラーのロマン要素が消えたーーーー!!!!orz
絶対目の中に血が入っていた方が、美しくて異質な感じが出ているのに、
世間のクロエ・グレース・モレッツちゃん人気を意識してか、綺麗にしちゃったよ!!!
どんどん血が少なっていくよ、あかん~!!

日本の映画ポスターはほんっとに格好悪いものが多いので、
とっても勿体ないです。
映画そのものよりキャスティングが優位なんですね。
海外のポスターを見ると映画の一部、という存在位置なのを感じて、
ポスター自体も作品の雰囲気を盛り上げるのに一役買っていると感じますが、

日本で作られた映画のポスターは映画の外にある感じ。別世界のものなのです。
売れるために外から色々つけた余計な飾り付け、というか。
情報過多です。
これは国民せいかもしれません。だって、家庭用洗剤をはじめとした日用品で、スタイリッシュなパッケージって、見たことないもの。(もちろんお菓子とかの食料品も)
――――――――――――――(追記ここまで)

そういえば、ニューヨークでこのリメイク版『キャリー』の面白いプロモーションを行われました。
日本では絶対できないだろうな、っていうプロモーションです。
これは必見。


うわー!!その場に居合わせたかった~!!

私がオリジナル版の『キャリー』(1976・米)を観たのは、リアルタイムじゃなく中学一年の時、レンタルビデオででした。

ヒロインキャリーを演じたシシー・スぺイセクの薄幸感が、この映画の説得力でした。
さて、リメイク版はどうでしょう。