またやってきた。
4年ごとにやってくるアイツ。
え?オリンピック?
ちがうちがう。
私の元にやってくるアイツとは、指紋を消し去るアイツだ。
どういうわけか、ほぼ3~4年ごとに、指の指紋が無くなるほど薄くなる。
もともと私の指の皮膚は薄くて、缶コーヒーはおろか、スターバックスのカフェモカでさえ、スリーブがないと熱くて持てない。猫舌ならぬ猫っ手だ。
そんな指が、この周期ごとに、痒くなったかと思うと、
もう数日後には、指先はつるつるテカテカ、放っておいても熱を持ってチリチリ痛む。
病院に行っても原因が判らない。
似たような症状の手湿疹やアカギレとは、違うと言われる。
食器を洗うときはお湯だとゴム手袋ごしにでもジンジンするし、
酷い時はPCのキーボードも叩けなくなるくらいに痛む。
職業的には致命的だ。
そうしてひと月ほど、私の指から日常を少し食いつぶしては、いつの間にかいなくなる。
数年ごとにやって来て、ひと月ほど暴れてはいなくなる、正体不明のアイツ。
数年ごとにやってくる、と言えば
『ジーパーズ・クリーパーズ』。
映画好きの人は『IT』かな?と思ったでしょ。
『IT』は昨年のヒットでフューチャーされてかなり人気者なので、今日は、こっちで行くことにする。
『ジーパーズ・クリーパーズ』は、23年に一度やって来て、23日間人々を襲っては消える得体の知れない怪物が出てくる、オカルト・ホラーだ。
主人公は大学生のトリッシュと弟のダリー。
男女が出てくるのに恋愛関係にある男女じゃなくて姉弟っていう設定が、まずイイ。
イチャイチャしてるうちにやられる心配をせずに済む(笑)。
二人は車で帰省する途中で、奇妙なトラックに煽られる。
この映画には70~80年代のホラーへのオマージュがたくさん。
観客はこの一連のシーンでスピルバーグ監督の『激突!』を思い出し、偏執狂に怖い思いをさせられる姉弟の姿を追うのかと一瞬思うが、物語は別の不気味さにスライドして行く。
原題になっている「Jeepers Creepers」はルイ・アームストロングによるジャズのスタンダードナンバーのこと。
この曲が死の宣告として使われている。
この「Jeepers Creepers」という言葉は「Jesus Christ」の変型だといわれていて、
70年代頃には「なんてこった!」という時によく使われていたスラングだ。
悪魔が登場する映画のタイトルに「Jesus Christ」が使われている皮肉と、
まさに「なんてこった!」な展開の作品。
この歌の途中で
「where'd ya get those eyes?」という歌詞が出てくるけど、
「その瞳を一体どこで手に入れたんだい?」なんて、
本編を観ていただけるとちょっとゾクゾクすると思う。
ちなみに続編は『ヒューマン・キャッチャー』という、続編を微塵も感じさせないタイトル。
(原題は『Jeepers Creepers2』なのに!)
続編の方は今日紹介する本作の4日後の惨劇が繰り広げられる様子を描いている。
容赦ないし、圧倒的だし、理不尽。
正体不明のアイツはいたってマイペース。
「んじゃ、23年後また!」
と、これまでも軽やかに去ってきたんだろう。
私の指のアイツも
「んじゃ!また4年後!」
と軽やかに去るんだろう。
何事もなかったように。また数年後にやって来ることが当然であるかのように。