2018年4月1日日曜日

君はピンチに笑えるか

ずっとブログをサボっていた。

一度サボるとだんだん再開するきっかけを探すようになる。
きっかけを探し始めると、より意味のあるきっかけを探すようになる。
「つき動かす何か」というような強くて意味のあるきっかけを。
そうしてどんどん遠のく。
そうしてずっと放置してしまった。

昨年、2017年、
なんだか仕事がことごとく上手くいかなくて凹んでいる時期がかなりあった。
胃腸炎で食べられない時期がふた月ほどあり、
食べたいものがあるのに食べられないと、人はどんどん悲観的になっていく。
そう言えば、ずっと若い頃、そんな経験があって、知っていたはずなのに。
すっかり忘れていた。

辛い時に、口角を上げてほほ笑んでみると、脳にいわゆる“しあわせホルモン”セロトニンが分泌されて、辛い気分を軽減してくれるという。
「辛い時こそ笑え」、というのは、理に適った辛さ解消法だったのだ。
20代の、あのときの私は知らなかったけれど。

そんなこんなで昨年の私は、夜中にベッドの中でニヤリと笑みを浮かべたり、
ほほ笑みながら歩いてみたり、
「わっはっは」と笑い声を口に出してみたりと、どうにかして自分に元気を取り戻す方法を模索していた。
そんなとき、頭の中で音楽が鳴り響いた。
辛い時に必ず聞いていた、『インディ・ジョーンズ』のテーマだ。

中でもシリーズ2作目の『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』は、私にとっては特別な映画だ。
私はその頃14歳。演劇部でときどき徹夜をしては脚本を書いていた。
当時、やっとビデオデッキが殆どの一般家庭に普及した頃。
母がテレビで放送した『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』のメイキングを録画しておいてくれて、
学校から帰宅した私に見せてくれた。
あの日、運命の雷に打たれて、今私は映画のライターをしている。

夢を追いかけていると、挫折は何度でも何度でもやって来るし、
まるで宇宙空間でたった一人、
暗闇の中に取り残されたような圧倒的な孤独と不安。

夢を追いかけ始めてあっという間の長い月日が過ぎて、
周りの同じ年の人たちはきちんと社会で出世したり、妻や夫になったり、子供の親になっていたり。
同じような夢を持っていても諦めていく人を、何人も見てきたり。
周りの景色が見えてしまうと、
どうしたって「自分はこれでいいのか」という疑問と叱責が、瞬く間にムクムクと巨大化してしまう。
それなら宇宙空間に独り、の方が、良いのだろうか。果たして。

心が折れそうな時、いつも初心に帰る気持ちで私は『インディ・ジョーンズ』を観なおす。
ハリソン・フォード扮するインディは、
ツイードのスーツを着て大学で教鞭をとっている間は「ジョーンズ博士(ヘンリー・ジョーンズ・Jr.)」だ。
彼のやりたいことは冒険であり、まだ見ぬ遺物の発見であり、やりたいことをやっている時の彼は牛追いムチにフェドーラ帽、レザージャケットを身につけた、「インディ」になる。

画面の中のインディは、しょっちゅう危険な目に遭う。
ワニのエサにされそうになるし、銃を持った怪しい男たちにしょっちゅう追われる。
気味の悪い虫や大嫌いなヘビにだって囲まれるし、大きな岩にも追いかけられる。
そんなピンチの時に、インディは度々ニヤリと笑うのだ。
「面白くなってきたぞ」とでも言うように。

この笑顔にめちゃくちゃ痺れる。

君はピンチの時に笑えるか。
「面白くなってきたぞ」そう言って夢に、人生に、立ち向かえるか。


今でもまだ、夢の途中。
心が折れそうな時には、いつもインディのあの笑みに助けられる。


今日も私は自分に問う。
「私はピンチの時に笑えるか」



本日の映画

タイトル:『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』
原題:Indiana Jones and the Temple of Doom 上映:118min 製作:1984年・アメリカ
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:ハリソン・フォード/ケイト・キャプショー/キー・ホイ・クァン